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福島地方裁判所 平成6年(わ)32号 判決 1994年7月28日

本店所在地

福島県郡山市菜根四丁目一二番二五号

中央総合開発株式会社

(代表者代表取締役 馬場隆一郎)

本籍

福島県郡山市横塚五丁目五番

住居

同県同市大槻町字西宮前六番地

会社役員

馬場隆一郎

昭和一七年一一月一三日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官野口元郎出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人中央総合開発株式会社を罰金一五〇〇万円に、

被告人馬場隆一郎を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人馬場隆一郎に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人中央総合開発株式会社は、福島県郡山市菜根四丁目一二番二五号に本店を置き、不動産の売買及び仲介業等を目的とする資本金一六〇〇万円の株式会社であり、被告人馬場隆一郎は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人馬場は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、収入を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの間における同会社の実際所得金額が一億二〇七五万四二四九円であったのにかかわらず、右法人税の納期限である平成二年二月二八日までに、同市堂前町二〇番一一号所在の所轄郡山税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における法人税額四九七五万六六〇〇円を免れ

第二  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの間における同会社の実際所得金額が三八三一万八九九一円であったのにかかわらず、右法人税の納期限である平成三年二月二八日までに、前記郡山税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における法人税額一四四四万七二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人中央総合開発株式会社代表者兼被告人馬場隆一郎の当公判廷における供述

一  被告人馬場隆一郎の検察官(五通)に対する各供述調書

一  被告人馬場隆一郎の大蔵事務官(4・9・4付、同・12・14付)に対する各質問てん末書

一  被告人馬場隆一郎作成の各上申書

一  菊地正一、小島和雄、堀江五男、根本敏一、堀江一男、本名昭、原田友義、板橋利雄、三浦和宏、橋本義雄、首藤忠良、八代八十吉、渡辺昌往、橋本登雄、馬場光春、茂古沼臣子及び吉田良子の検察官に対する各供述調書

一  相澤瑞彦の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  木村委子、秋元貴子、本名昭作成の各上申書

一  根本敏一(五通)及び原田友義作成の各申述書

一  大蔵事務官作成の収入調査書、人件費調査書、外注費調査書、一般管理費調査書、受取利息調査書、役員賞与損金不算入調査書、交際費の損金不算入額調査書、損金不算入県民税利子割調査書、事業税認定損調査書、銀行調査書及び証券会社調査書

一  検察官作成の捜査関係事項照会書謄本及びこれに基づく福島県信用保証協会作成の回答書

一  検察事務官作成の各捜査報告書

一  大蔵事務官作成の告発書

一  登記官作成の商業登記簿謄本

(法令の適用)

一  被告人中央総合開発株式会社

罰条 法人税法一五九条一項、二項、一六四条一項

併合罪の加重 刑法四五条前段、四八条二項

宣告刑 罰金一五〇〇万円

二  被告人馬場隆一郎

罰条 法人税法一五九条一項

刑種の選択 懲役刑

併合罪の加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重)

宣告刑 懲役一年

刑の執行猶予 刑法二五条一項

(量刑の理由)

被告人中央総合開発株式会社は、不動産の売買及び仲介業等を主たる業務とするもので、被告人馬場隆一郎は、同会社代表取締役として同会社の業務全般を統括する者であるところ、納税を免れて会社の備蓄資産を形成するなどの目的のため、前判示のとおり二納税年度にわたり、所得額において合計一億五九〇七万三二四〇円を秘匿し、税額において合計六四二〇万三八〇〇円をほ脱したもので、秘匿所得、ほ脱税額は多額である上、ほ脱率は一〇〇パーセントと極めて高く、また、その手段、方法は、ゴルフ場開発事業委託報酬金等の多額の収入を得ながらその大部分を架空名義普通預金口座に入金して秘匿・除外し、また、不動産ブローカーや地上げ業者らに業務委託報酬金額を支払う際、水増しした領収証を徴収することにより経費の過大計上を図ったものであって、そのようにして秘匿した資金を株式投資などとして留保していたものであり、その犯行態様は計画的にして悪質であって、その刑事責任は重いといわざるを得ない。とりわけ被告人馬場隆一郎は、被告人中央総合開発株式会社の脱税を自ら企図し、部下社員に指示してこれを敢行したもので、本件脱税に関与した責任は重いといわねばならない。

しかし、当然のこととはいえ、本件発覚後においては、右脱税額に見合う修正申告をなし、これによる税額について、国税局担当者と分割納付のための協議を重ねて納付に向け一応の努力をし、また、その一部を納付していること、被告人馬場隆一郎は一回の罰金刑以外に前科なく、犯行を反省していること等の事情もあるのでその余の事情をも総合斟酌して主文掲記のとおり、被告人中央総合開発株式会社については罰金刑に処し、被告人馬場隆一郎については懲役刑に処するとともに特にその刑の執行を猶予するのが相当と認める。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 井野場明子)

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